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お嬢様と二人の執事

第10章 旅立ち


亘に電話をし終えた沙都子が麻紗たちの元に戻る。

「あのね、大学の裏にホテルがあるでしょ?あそこでランチをしませんか?ってお祖父様が…。」

「え?でも私そんなお金持ってきてないよ?」

麻紗が不安そうな顔で言う。

「そこは大丈夫。お祖父様がこちらが誘うんだからって二人に言っておいてって。」

「いいよ、沙都子、どこでも付き合うよ?この格好ならあのホテルに入っても浮かないもんね?」

キャンパスの裏にある高級ホテル。

もともと学会や研修などで泊まりがけでくる内外の要人を含むゲスト向けに大学が出資して作ったホテルだがさすがにおいそれと学生が行けるところではない。

「確かに…普段の格好だと入りづらいよね?うん、沙都のお祖父様に感謝だね」

麻紗の切り替えの早さに救われる想いの沙都子。

3人で話しながら歩くと案外あっさりと着いてしまう。

入口でドアマンに名前を告げると中からホテルスタッフが出てきてホテル内に案内される。

びっくりしたように動きを止めた二人と当たり前のように着いていく沙都子。

後ろの二人に気がついた沙都子が声を書ける。

「二人ともどうしたの?こっちだって」

麻紗も絢も家はそこそこ立派で東堂とは比べるまでもないがそれでも十分に令嬢と呼ばれておかしくない立場にいた。

ホテルに食事に来ることだって決して珍しいことではなかった。

それでも沙都子とホテルスタッフのやり取りをみて、場の空気に飲まれかかった。

麻紗と絢は顔を見合わせ、一つ頷くと前を歩く沙都子を追いかける。

その所作はとても美しかった。

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