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お嬢様と二人の執事

第11章 桜

神山が紅茶を出し終わり、部屋を出て行くと入れ替わりで城が入ってきた。

「旦那様…いかがなさいましたか?」

「いいや…」

にやりと亘は城に笑いかけた。

「若者たちが、剣を磨き合っているようだ…」

「左様でございましたか…ようございましたな…」

メガネをくいと上げて、神山の拭き残した紅茶を拭う。

「旦那様、紅茶が冷めてしまいます」

「ああ…」

カップを受け取ると、亘は紅茶の芳香を楽しんだ。

「あの神山と高宮がな…」

遠い昔の幼い彼らを、亘は思い出していた。

城はそんな亘を見つめて、ただ微笑んでいる。

もうすぐ4月になろうかという、春の午後だった。





「東堂さん!」

頭上を教官の声が飛んで行く。

今日はいつもにも増して、怒っているなと沙都子は思った。

「東堂さん!!あなたですよ!」

東堂というひとは、なぜ返事をしないんだろうと沙都子は思った。

「東堂さんっっ!」

「あああああ!はいっ!はいっ!」

沙都子はこれを研修中、何度もやっている。

大学までは白濱の苗字で通していたが、今は籍を変えたので、書類上苗字は東堂なのだ。

それをすっかり忘れてしまう。

「すいません…苗字が変わったばかりで…」

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