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お嬢様と二人の執事

第11章 桜

「私…高宮さんのこと、勘違いしてたのかしら…」

「ん…そりゃ、穏やかじゃないね…」

神山の腕に抱かれながら、沙都子は一日の事を報告するのが常になっている。

神山のベストの裾を握りながら、高宮の話をしていることを沙都子は意識していない。

それほど、今日の高宮の鮮やかな手腕が印象的だったのだ。

「私の立場が、がらりと変わった気がする…」

「高宮はヨーロッパでそんなことばかりしていたらしいよ…」

「え?」

「あ、いや…なんでもない」

「あ…ごめんなさい。私…」

「ん?なにが?」

「その…悟の前で…高宮さんのこと…」

「いいよ…気にしてない」

神山は沙都子の髪を撫でた。

「こうやって毎晩、貴女を腕に抱けるんだから…」

高宮が東堂本社に勤務になったことで、この館に来る執事は神山だけになった。

高宮は本邸で寝起きしている。

だから沙都子の褥に侍ることもなくなった。

その代わり、週末になると沙都子と高宮は外に出かけるようになった。

今までと同じように、お互い境界線を引いている。

平日は神山のもの。

週末は高宮のもの。

沙都子の揺れ動く心は、今だ定まっていない。

二つに引き裂かれたまま、夜も眠れない時がある。

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