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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

沙都子が落ち着くと、神山は手を差し出した。

「沙都子様、どうぞ」

まだ、慣れない。

でもこれからは、慣れていかなければならないのだ。

沙都子は神山の手に右手を載せた。

そのまま立ち上がると、神山はにっこりと沙都子に微笑みを見せた。

「参りましょう。沙都子様」

そのまま手を引かれて、ドアの前に立つ。

神山がドアを開くと、沙都子は背筋を伸ばした。

そのまま歩き出すのを、神山は驚いた表情で眺めた。

「なんでしょう」

少し照れながら沙都子が訊ねると、神山は少し笑う。

「いいえ…頼もしゅうございます」

「え?」

沙都子の問いかけには答えず、神山は玄関フロアに向かって歩き出した。

駆け寄ってきた高宮に、神山は耳打ちをすると、そのまま去っていった。

高宮が恭しく礼をする。

「沙都子様、残りの使用人をご紹介いたします」

端正な顔をほころばせて、高宮が沙都子を見上げる。

「はい…高宮さん。お願いします」

胸の前でぐっと手を握ると、沙都子は歩き出した。

ここで生きていこう。

そう、決めたのだ。

お祖父様の元で、できるだけ恥ずかしくない人間になろう。

沙都子は心にそう決めた。

足取りは、力強い。

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