お嬢様と二人の執事
第11章 桜
「あ…桜…」
沙都子が窓の外を指差す。
激しい情事の後の気怠い身体を起こすと、シーツを纏って窓に歩み寄る。
「あれは遅い時期に咲く桜なんだ。綺麗だろう?」
「凄く…綺麗」
館の窓から見える一群の桜の木。
公爵時代から、絶えず東堂の庭には桜の林がある。
咲く時期がそれぞれ違う桜を群れにして植えてある。
歴代の庭師が、腕によりをかけて世話をしてきたものだ。
館の庭を眺めながら、沙都子は遠い目をする。
小さいころ、よく両親と春になると桜を見に行った。
埼玉の川の土手まで車で出かけ、母の作ったお弁当を食べる。
たったこれだけの事だったが、毎年行われた恒例行事は、沙都子にとって思い出深いものだった。
「お墓参りに行きたい…」
「沙都子…」
「もう半年経った…」
「そうだったね…」
沙都子の両親が亡くなって、半年の月日が経過した。
その間に沙都子に起こった出来事は、この22年の間の出来事よりも沙都子には衝撃的だった。
「もしよかったら、絢様と麻紗様と一緒に行ってみてはいかがですか?」
東堂の家は神道なので、沙都子にはいつのタイミングで墓に参ればいいのかわからなかった。
白濱の家自体は、仏式で通していたので、墓も仏式だ。
横浜の霊園に土地を買い、墓を建ててある。
「高宮か私で送迎いたしましょう」
「ほんとに…?」
「今度のお休みに、誘ってごらんなさい。きっとお二人共快諾なさってくださいます」
神山の手が、優しく沙都子の髪を滑っていく。
沙都子が窓の外を指差す。
激しい情事の後の気怠い身体を起こすと、シーツを纏って窓に歩み寄る。
「あれは遅い時期に咲く桜なんだ。綺麗だろう?」
「凄く…綺麗」
館の窓から見える一群の桜の木。
公爵時代から、絶えず東堂の庭には桜の林がある。
咲く時期がそれぞれ違う桜を群れにして植えてある。
歴代の庭師が、腕によりをかけて世話をしてきたものだ。
館の庭を眺めながら、沙都子は遠い目をする。
小さいころ、よく両親と春になると桜を見に行った。
埼玉の川の土手まで車で出かけ、母の作ったお弁当を食べる。
たったこれだけの事だったが、毎年行われた恒例行事は、沙都子にとって思い出深いものだった。
「お墓参りに行きたい…」
「沙都子…」
「もう半年経った…」
「そうだったね…」
沙都子の両親が亡くなって、半年の月日が経過した。
その間に沙都子に起こった出来事は、この22年の間の出来事よりも沙都子には衝撃的だった。
「もしよかったら、絢様と麻紗様と一緒に行ってみてはいかがですか?」
東堂の家は神道なので、沙都子にはいつのタイミングで墓に参ればいいのかわからなかった。
白濱の家自体は、仏式で通していたので、墓も仏式だ。
横浜の霊園に土地を買い、墓を建ててある。
「高宮か私で送迎いたしましょう」
「ほんとに…?」
「今度のお休みに、誘ってごらんなさい。きっとお二人共快諾なさってくださいます」
神山の手が、優しく沙都子の髪を滑っていく。