テキストサイズ

お嬢様と二人の執事

第11章 桜

両親の墓に線香を立てると、3人で神妙に手を合わせる。

供えた菊の花が風に揺れている。

沙都子は長い祈りを捧げた。

父や母に聞きたいことがたくさんあった。

そして甘えたかった。

子供の頃に戻って、全てリセットしたいとさえ思った事もあった。

今現在の深い悩み…

それはとても両親に言えるものではなかったが、二人がいればこんなことにはならなかったのにと思う気持ちもないでもない。

こみ上げてくるものを抑えきれず、持っていたハンカチで沙都子は涙を拭った。

そんな沙都子の背中を二人は優しく擦った。

沙都子が落ち着くのを待って、二人は墓苑内の休憩室に沙都子を誘った。

洋風の小奇麗な建物で、室内にテーブルと椅子のセットが置いてあった。

「さと、少し座ろうよ」

時期外れのため、他に参る人もなく、休憩室は沙都子たちだけだった。

絢がカバンから大きな水筒を取り出した。

「これ、私の特製ブレンドティーなの。飲んでみて」

カップを3つ取り出し注いだ。

温かい湯気を上げて、お茶が沙都子と麻紗の前に置かれた。

絢は自分の分も注ぐと、早速それに口をつけた。

「ああ…温まる…」

「わ、美味しいね。さと」

「うん…美味しい!」

沙都子が微笑むと、絢と麻紗はほっとした顔をした。

それに気づいた沙都子が、申し訳無さそうな顔をした。

「ごめんね…泣いたりして…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ