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お嬢様と二人の執事

第11章 桜

「ううん。泣きたい時には泣かなきゃ。沙都子はご両親を一度に亡くすなんて、大変な目に遭ったんだから…」

「そうだよ。これで泣かなきゃ、おかしいんだからね?」

「うん…ありがとう」

そう言うと、カップを持ったまま、また沙都子は涙ぐむ。

「気が済むまで泣きなよ…」

絢の手が、沙都子の髪をさらさらと撫でていく。

麻紗はカップを置かせると、沙都子の手を取って、ぎゅっと握った。

「大丈夫だよ。私たちはさとが幾ら泣いても付き合うから…」

「絢ちゃん…麻紗ちゃん…」

沙都子の涙腺が一気に緩み、静かに泣きだした。

「あり…ありがと…」

「うん…うん…いいんだよ…」

涙もろい麻紗と絢は、沙都子と一緒になって涙ぐんでいる。

沙都子の涙は止めどなく溢れた。

二人は沙都子の気が済むまで、ずっとそうしていた。

やがて沙都子が泣き止むと、絢は再びお茶を注いだ。

「ありがとう…」

掠れた声で言うと、沙都子はお茶を口に含んだ。

「でもさ…安心したよ」

「え?」

「沙都子、神山さんとつきあってるの?」

「え…?」

「さっき沙都子、寝言で悟って下の名前で呼んでたよ?」

「水臭いなあ…言ってよ!あんなしっかりした彼氏が居るなら、さと大丈夫だよ!」

「私は高宮さんと付き合うかなって思ったんだけどね…まさか神山さんだったなんて」

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