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お嬢様と二人の執事

第11章 桜

「最初は神山さんが好きだとはっきりわかった。でも、高宮さんのことも放っておけない…」

「それは…高宮さんに辛い過去があるから同情してるだけじゃないの?」

「違う…そんなのだったら、私わかる。そうじゃない…高宮さんも、神山さんも私には必要なの…」

ぽたりと涙が沙都子のワンピースに染みを作った。

「あの二人が居ないと、生きていけないの…」

絢の手に力が入る。

「神山さんと高宮さんは、お互いのことを知ってるの?」

「知ってる…」

「えっ…それでなにも言わないの?」

「言わない…私の心のままにしていいって…そう言って…責めることもしない…」

「沙都子…」

「もう…辛いよ…」

「さと…」

「私…どうしたらいいのかな…絶対にどちらか選ばないといけないのかな…」

沙都子は口を歪めて、笑う。

「それともこんなことしてる私に、罰が当たったのかな…苦しめって…神様が…」

「沙都子…!そんな風に言わないの」

「どちらも捨てられない!どちらも…だって…捨てたら…」

沙都子は顔を伏せた。

「死んじゃう…」

「沙都子…」

「あの人達、私が捨てたら死んじゃうと思う…」

沙都子の水色のワンピースに次々と涙が落ちる。

「…もう誰も居なくなってほしくない…」

絢と麻紗はハッとして、お互いの顔をみた。

両親を亡くしたばかりの沙都子には、身近に居るものがいなくなることが、どれほど怖いことか。

二人は沙都子とは10年以上の付き合いがある。

容易に想像ができた。

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