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お嬢様と二人の執事

第12章 主人と執事と上司

2年前―




あの雷の夜。

「神山。高宮を呼んで」

沙都子の声は凛としていた。

神山は突然の沙都子の変化に戸惑いを隠せない。

高宮に電話をし、すぐに高宮は館に到着した。

「なにかご用でしょうか?」

高宮もまた、沙都子の様子に戸惑いを隠せない。

窓辺に佇んだまま、沙都子は二人を見つめた。

「私…」

沙都子は言葉を切って、微笑んだ。

二人はその笑顔に、釘付けになった。

とても佳麗な笑みだった。

「どちらかを選ぶなんて、できません」

きっぱりと言い切ると、沙都子はゆっくりとソファに腰掛けた。

「私はあなた方を一生愛し抜こうと決めました」

二人は息を呑んで沙都子の顔を見つめた。

「キスを」

そう言って沙都子は二人に両手を差し出した。

「できないのなら、今すぐここから出て行って」

それは自信に溢れる言葉だった。

二人とも、出て行くことがないとわかったうえでの言葉。


暫くの沈黙のあと、フラフラと神山と高宮は沙都子に歩み寄った。

沙都子の前で膝をつくと、手を取り口吻をした。

「いいの…?本当に」

「沙都子様…」

神山は沙都子の手を、掌で包み込んだ。

「私はあなた方のものにはなるけど、どちらか一人のものにはならない。それでもいいの?」

「沙都子様の望むとおりに…」

高宮が沙都子の手に、また口吻した。

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