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お嬢様と二人の執事

第12章 主人と執事と上司

「高宮。これは提案なんだが…」

館の神山の部屋で、二人は話している。

「俺はこのお屋敷を統括していく人間になる。この家のことに関しては、俺に任せて欲しい」

「神山さん…」

「東堂本社での事は、俺ではもうどうにもならないから、お前に任せていいか?」

神山はぐっと目に力を入れて、高宮を見つめた。

「俺達にはそれぞれ役割がある。その役割に添って、沙都子様を愛していけばいいんじゃないか?」

「役割に添って愛する…」

「ああ。沙都子様は、俺達を一生愛すると言ってくださった。俺たちは、俺たちで、その思いに応えて行かなきゃならないんじゃないか?」

「ああ…」

「納得が行かないかもしれないが、俺はずっと考えていたんだ。
お前も俺も、生きていける道を…」

「…神山さん…アンタ…」

「沙都子様は変わられた。だから、俺たちも変わろう」

神山の手が、そっと高宮の手を握った。

高宮は驚いて手を引こうとしたが、神山は離さない。

「…もう、わかったよ…」

高宮がふてくされたように言うと、神山は微笑んだ。

「ん…一也、ありがとな…」

「今更、兄貴ぶるなよ」

照れながら、高宮が横を向いた。

だが、神山の握った手を強く握り返した。

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