
お嬢様と二人の執事
第13章 未来への階
若く美しく品のよい沙都子が、謝罪するトップたちの後ろに控えていた。
謝罪に飽き始めていたマスコミが、突然現れた美人担当者を放っておくはずがない。
謝罪会見の内容よりも沙都子に注目が向いたのは現在の日本のマスコミなら当然のことだったかもしれない。
そして…狙った獲物に対してはハイエナのようなしつこさを持つマスコミの性質を逆手にとって、高宮が公表しても問題ない程度の情報を小出しにしていく。
両親の不慮の事故により名家の後継者となった沙都子のことを『現代のシンデレラ』とキャッチフレーズをつけてマスコミは追いかけた。
結果、沙都子の姿は亘の後継者として徐々に世間に浸透していくことになった。
そしてこの日、沙都子は新たな自分のオフィスになる新築のビルの前にいた。
ガラス張りのスタイリッシュな高層ビル。
ここから沙都子のグループトップへの真の道が始まることになる。
一つ大きく深呼吸をすると沙都子は笑顔で高宮を見る。
「もう大丈夫、行きましょう?」
背筋を伸ばし、控えめな笑顔を顔に刷き沙都子は歩き出した。
その後ろ姿はまさに女王そのものだった。
高宮はその姿に感動しつつ、足早にその背中を追ってエレベーターに乗り込む。
取締役に就任したことにより二人は専用の執務スペースが用意された。
大きな窓から見える大都会の風景はまるでおもちゃみたいで沙都子は変な感覚に捕らわれそうになった。
