
お嬢様と二人の執事
第13章 未来への階
沙都子と高宮が東堂ホールディングスの取締役に就任してしばらくして、ようやくグループ内も落ち着きを取り戻し始めた。
それと同時にグループ内での沙都子の存在感は日に日に増していく。
普段はおっとりしているように見える沙都子だがその指示や考えは非常に的確で徐々に結果が形になって見え始めていた。
その結果に、ほかの取締役たちの態度も軟化し始めている。
最初は自分の子供と言ってもおかしくない二人が取締役として取締役会に出席することに渋い顔をしていた面々ももはやなにも言えなくなってきた。
それほどに二人の手腕は見事だった。
与えられた執務室でパソコン画面を睨んでいた沙都子。
ずっと難しい顔で考え事をしている。
ノックの音がして扉が開く。
グループ会社の経営会議にオブザーバー参加していた高宮が戻ってきた。
「沙都子様、ただいま戻りました。」
「おかえりなさい。会議はどんな感じだった?」
「この後報告します。その前にお茶でも淹れましょう?考え事なさってたんですか?」
デスクの上の冷めきったマグカップを見て高宮が言う。
「ええ…ちょっと…。」
そのまままたパソコンに視線を移す沙都子に高宮はマグカップを下げ、ティーカップに注いだ薫り高い紅茶を差し出した。
「どうぞ…冷めないうちに一息入れてください。」
「ありがとう。」
そういうと沙都子は美しい白磁のカップに唇をつけた。
