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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

「雪芽とはね、雪の中から出てくる新芽をイメージしてつけた名前だ」

またワインを口に含むと、一息つく。

「雪の中からでも芽を出す、強い子になって欲しくてね…その通り、強い子になってくれた…」

目頭を押さえると、暫く沈黙が流れた。

「会長、少しお休みになられますか?」

遠慮がちに神山が声を掛ける。

「いいや…大丈夫だ。食事を続けよう」

「お祖父様」

沙都子は立ち上がると、ハンドバッグに入っていたハンカチを手渡した。

「使ってください」

「沙都子…」

亘は受け取ると、目を押さえた。

そして、沙都子を見上げた。

「こうやって見ると、雄介にもそっくりだな…だが、芯の強さは雪芽にそっくりだ」

「本当に?」

「ああ…二人の子供だ。沙都子は…」

両親が認められたようで、沙都子は嬉しかった。

傍らに佇む神山も微笑んでいる。

「ありがとう…お祖父様」

そう言って手を握ると、亘も沙都子の手を握り返した。

「沙都子、よく来てくれた。これからはなんの心配も要らないからね…」

「はい…お祖父様」

「さあ、食事を続けよう」

その後は、和やかに時間が流れた。

夕食を食べ終わり、沙都子は本邸を後にした。

沙都子はマイバッハに揺られながら、夢心地でシートに沈み込んでいった。

シートがふわふわで気持ちよかった。

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