
お嬢様と二人の執事
第13章 未来への階
「亘様はリビングでお待ちです。沙都子様がいらっしゃるのを心待ちにしておりましたよ?」
皆を先導する城が穏やかな口調で言う。
「リビングにいらっしゃるってことは…今日は体調がいいのね?」
城の言葉に沙都子は嬉しそうに微笑み、廊下を歩くあゆみを早めた。
沙都子にとっては今やただ一人の家族である亘。
過ごした時間は短くとも沙都子を包む愛情の深さに確かな絆が生まれていた。
長い廊下の突き当たりにある日当りのいいリビング。
そのソファーに亘が座っていた。
足音が聞こえたのか沙都子がリビングに足を踏み入れると亘が振り返った。
「お祖父様!」
沙都子は駆け寄りたい気持ちを抑えていくらか早足で亘の元に歩み寄る。
そんな沙都子を笑いながら亘は見つめる。
「よく来たね、沙都子。遠いところありがとう。絢さんと麻紗さんだね、お二人もわざわざありがとう。よかったらゆっくりしていくといいよ。」
亘の言葉に麻紗と絢は亘の傍に行き、挨拶をした。
「お休みのところお邪魔して済みません。久しぶりにお会いできて嬉しいです。」
絢が華やかな笑みとともに言う。
「こんにちは、突然押し掛けて済みません。すごく素敵な場所ですね。静かだしのんびりするのにすごくよさそう。」
麻紗は明るい笑みとともに少し周りをきょろきょろと見ながら言った。
「お祖父様、あの…ご報告したいことがあるんです。」
切り出した沙都子を手で制した亘はその場に立つ5人に席を進めた。
