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お嬢様と二人の執事

第13章 未来への階

「さぁ、召し上がれ。若いお嬢さんたちはこういうものが好きだろう?」

亘の言葉に麻紗と絢が素直に返事をする。

そのまま亘が居ない東堂の話や、麻紗と絢の仕事の話などたわいもない話で盛り上がった。

一段落したところで沙都子が改めて口を開く。

「お祖父様、報告があります。近々絢さんと麻紗さんにそれそれ力を貸して頂こうと思っています。」

沙都子が強い決意を籠めた瞳で亘を見る。

「それは友情からかい?それとも東堂のトップに立つ立場からの判断かな?」

亘の問いはけっして軽いものではない。

今の亘にはグループのトップに立つ人間の厳しさがあった。

高宮がフォローしとうとするのを沙都子が目で止めた。

「東堂のトップに立つものとしての判断です。今、グループ内で弱くなっている部分を強化するのに最適な人材だと判断しました。

ただ…そこに友情が全く入っていないかと問われれば答えはNOです。
二人に…傍にいてほしいと思っています。」

沙都子は小さく目を閉じた。

「絢さん、麻紗さん…大きな組織のトップに立つものは常に孤独な者でね…。時には非情な判断をしなくてはならないこともあるし、常に従業員や関連する多くの人々の生活を背負う重さもある。

それは一人ではすぐに潰されてしまうほど重いものだ。その重さを忘れてしまっても人々を不幸にするし、感じすぎると自分がだめになる。

そう言う時にね、近くで支えてくれる人がいるというのはとても力強いものなんだ。

勿論、支える側も重荷を背負うことになる。」

亘はそこまで言うと絢と麻紗を見る。

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