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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

神山は病院とは打って変わって静まり返っている。

智紀はそんな神山を気にして色々話しかけているが、反応は良くない。

高宮は諦めて、智紀に話しかけた。

「智紀さん…あの、私は神山さんと同じ東堂で働いています、高宮と申します」

「あ、すいません。ご挨拶が遅れて…。僕は悟の兄で、神山智紀と言います」

「さっきの方は…?」

「ああ、一番上の兄です。親弘といいます。三人兄弟なんです」

「へえ…神山さんって末っ子だったんですね」

高宮は神山に話を振ってみたが、おしぼりをいじっている神山には届かなかった。

「あ、えっと。智紀さんは絵を描いてらっしゃるんですか?」

「ええ…。でも、折角銀座の画廊に絵を出して貰っているんですが、ちっとも売れなくて…」

「もしかして、今、お金がないんですか?」

「…恥ずかしながら…」

だから食べられていないのだと、高宮は納得した。

女将に胃に優しいものを頼み、智紀に茶を勧めた。

「どんな絵をお描きになるのですか?」

「そうですね…ジャンルは限りません。その時、その時、興味のあるものを描きます。
そのまま描写することが多いですかね」

「ほう…。大学で専攻は?」

「油絵でした。でも教授にはいつも怒られていました」

「なぜ?」

「課題どおりにやらなかったから」

そう言うと智紀はいたずらっこのような顔をして笑った。

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