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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

「勿論、課題は後で提出するんです。僕、筆は早い方なんで、皆が一枚完成させる時間で二枚描けるんです。
だからね、教授がどこまでだったら許してくれるか、毎回実験していたんです」

くすくす無邪気に笑う智紀の顔を見ていたら、高宮は俄然この売れない画家に興味が出てきた。

「一度、智紀さんの絵を見てみたいですね」

お世辞ではなくそう言ったら、智紀が懐からスマートフォンを取り出した。

「こんなふうなものです」

銀座の画廊の表通りに飾られた絵を写してある。

「こんな所に出さなくても良いって言ったんですけどね。ここのご主人が是非にって仰るから…。
記念に一枚撮りました」

そう言って頭を掻く。

嘘だろ、と高宮は思った。

普通、画廊で一番いい場所に展示されるなら、金を積んででもしてほしいことである。

出さなくても良いとはどういうことなんだ。

「でもやっぱり恥ずかしいので、次の日引っ込めて貰いました」

「ええ!?」

ビクっと智紀の身体が震えた。

「あ、あの?」

「え、いや…勿体なことされるなと思って」

「え…でも、恥ずかしいですし…」

智紀は赤くなって俯いた。

「僕なんか…」

そう言って微笑んでいる。

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