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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

この美術館建設は取締役直下のプロジェクトとなった。

コーポレート・ソーシャル・レスポンジビリティ(CSR)活動の一環として独立した部署を立ち上げた。

責任者には沙都子。オブザーバーには高宮がついた。

専用の部屋を本社に作り、そこで一気に計画は動き出した。

元々の責任者は目を白黒させていた。

「お、お嬢様自ら責任者に…」

高宮はそれを聞いて吹き出しそうになった。

やはり組織の末端には、沙都子の姿を見たこともないという者もいるのだ。

沙都子の女王然とした姿を見たら、お嬢様などと口が裂けても言えないだろうに。

「君、言葉には気をつけ給え。ここではお嬢様ではなく、取締役なんだからね」

そっと耳打ちしておいたら、元責任者は縮み上がった。

高宮よりも随分年上なのにだらしないが、高宮は気にもとめなかった。

沙都子が直接指揮を執るのには狙いがある。

この事業をCSR活動の一環としてマスコミに取り上げてもらい、取締役に就任した沙都子を世間に印象づけるのだ。

以前は謝罪会見で後ろに立っている花だった沙都子だが、キャリアを積み重ねた今、東堂の跡継ぎとして名を売るチャンスだった。

それには目玉が必要だ。

智紀の絵をそれにしようと、沙都子が決めた。

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