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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

「え?本当に僕の絵でいいのですか?」

代官山のアトリエで智紀が驚いている。

高宮は持参した封筒を差し出した。

「とりあえずこの前お話した3点の絵の代金です。ご確認下さい」

「はあ…」

智紀は恐る恐る分厚い封筒を手に取り、中身を見た。

「高宮さん…こんなに頂けません」

「なぜです。銀座の画廊のご主人につけていただいた値段です。妥当だと考えておりますが」

智紀がなにか言いかけた時、アトリエに入ってくるものがあった。

「智紀…あ、なんだ来客中だったか」

親弘だった。

「あ、兄さん。どうしたの?こんな早くに」

「近くまで来たから…ほら、差し入れだ」

「ありがとう」

親弘は高宮に小さく頭を下げると、奥に入っていった。

「すいません。高宮さん少し待っていて下さい」

智紀は慌てて奥に引っ込んでいった。

それから暫く二人は戻ってこない。

高宮は手持ち無沙汰になって、アトリエの中の絵をぐるりと見て回った。

途中ガタンと奥から物音が聴こえ、はしたないとは思ったのだが、様子を見に近づいた。

奥とアトリエを繋ぐ廊下は、長い暖簾で区切られていた。

ふと見ると足元に絵の具の蓋が転がっている。

高宮は拾い上げると、何気なく暖簾の隙間に目を遣った。

「え…?」

そこには信じられない光景があった。

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