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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

城は、亘に仕えて50年以上になる。

亘と共に、この東堂家を見守ってきたと言っても過言ではない。

亘の最も気の許せる友と言っても過言ではない。

「城…神山に沙都子を任せようと思う」

「旦那様…」

「私は間違って居ないだろうか」

ふっと微笑むと、城の目尻の皺が深くなった。

「一度犯した過ちは、もう二度と繰り返さないのが旦那様です」

「……ありがとう」

亘は揺り椅子の背に、深く凭れた。

「神山と沙都子をここへ」

「畏まりました」

テーブルに紅茶を置くと、ゆっくりと城は部屋を出て行った。




「え…?教育係ですか?」

「ああ、元々そのつもりではあったんだがね…

本当は家庭教師を何人か雇う予定だったが、沙都子も大学がある。

だから、当面はこの神山が沙都子の教育係となる。いいね」

「はい…お祖父様…」

ちらりと神山を見上げると、無表情で立っている。

なにか、不満なのか…。

沙都子の胸に不安が湧き上がってくる。

「それから、沙都子。これが、うちの家令の城だ」

「えっ…」

さっきからソファの影でうずくまっている老人がいる。

気になっていたが、亘があまりにも自然に無視しているので、言い出せなかった。

「さ、沙都子お嬢様…はじめまして…じょ、城でございます…」

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