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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

高宮はむっとしたが、それは表には出さない。

「悟さんとはフットマンの時代から一緒なんです。私も東堂のお屋敷で、執事をしておりましたから…。

数年前から本社勤務になりましたが、その頃から大変頼れる先輩ですよ?

今ではお屋敷の事は一手に担って、大変ご活躍でらっしゃいます」

「へえ…悟すごいんだね?親弘兄さん」

智紀がのんきに感心している。

「ああ…そうだな」

途端に親弘は黙りこんでしまう。

高宮は更に追い打ちを掛けたくなった。

東証一部企業の課長風情が、神山を軽く見ていることに、高宮は非常に腹が立っていた。

「悟さんは、お屋敷の主人である沙都子様の信頼もとても厚く、数年の内には家令になられるでしょう。

そうなったら東堂の歴史で、最年少の家令になります。本当に凄いことです」

またぴくりと親弘の眉が上がった。

「東堂には千年以上の歴史があります。本当に、悟さんには頭が下がりますよ…」

高宮がわざと低い声で言うと、鋭い視線を向けてきた。

「……そうですか。我が弟ながら、非常に光栄なことです。
すいません、時間ですので失礼いたします。
今度、ご挨拶にお伺い致しますので」

「ああ、その際は東堂のお屋敷に。悟さんもご一緒のほうが、リラックスできますでしょう?」

親弘は頭を下げると黙ってアトリエを出て行った。

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