テキストサイズ

お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

「あ、兄さん」

智紀が親弘を呼び止めた。

「これ、奥さんに。あと、これは恵ちゃんに。石鹸だってさ」

「ああ…すまんないつも」

「ううん。なんか知らないけど、いつも女の子がくれるんだ。僕、こんなに使わないから持って行ってよ」

「ありがとう」

結婚していたのか。しかも子供まで?高宮は驚きを隠せなかった。

親弘が出て行くと、智紀は高宮に向き直った。

「すいません、兄のこと…。お気を悪くされましたか?」

「いえ…私は悟さんの働きぶりを申し上げただけですよ?」

高宮は澄ましていたが、智紀には分かっていたようだった。

「兄は、悟のことになるとああなるんです…昔から…反りが合わないというか…」

「まあ、どこのご家庭でもそういうことはあるでしょうね」

「だから悟は、中学を卒業して家を出たんです」

「え?」

「悟は、それは兄を慕っていたんです。ある日突然、兄が悟を突き放すような態度を取り始めて…。
多分、それが辛くて家を出たんでしょうね」

智紀はつらそうな顔をしていた。

そういえば神山から、東堂に来る前の話なんて聞いたことがなかった。

高宮の脳裏には、少年の頃の神山の姿が蘇った。

あの時、神山に縋った自分を抱きしめてくれたが、そんな過去を背負っていたなんて…。

またチクリと高宮の胸が痛んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ