テキストサイズ

お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

社に戻った高宮は、上の空で沙都子に復命した。

「どうしたの?高宮部長?」

「はあ…」

沙都子の執務室で、高宮は立ちすくんでいる。

「悟のお兄さんとはちゃんと話できたの?」

「ええ、それは…」

「ほかに何かあったのね?」

沙都子はデスクに肘をついて微笑んだ。

「言ってご覧なさい。一也」

こんなとき。

一体、沙都子が何歳かわからなくなる。

自分のほうがはるかに年上で、いろいろな経験もある。

なのに沙都子にはリードされっぱなしだ。

そして、このような物言いをされても、不思議と不快にならないのだ。

むしろ引き込まれるように言ってしまう。

「実は…」

本当は言うつもりもなかったのに、あっさりと高宮は沙都子に神山の兄たちのことを喋ってしまった。

言ってしまってから、我に返って背中に汗を掻いた。

「ふうん…」

話を聞いて、沙都子は考えこんでしまった。

「じゃあ今度、智紀さんを屋敷に招きましょう。悟のために」

そう言って沙都子は微笑んだ。

「……ええ、そうですね」

神山と高宮と沙都子は、一心同体である。

神山の痛みは、沙都子と高宮の痛みでもある。

その痛みは、必ず三人で癒やす。

それが暗黙の了解になっている。

「今夜…私の部屋へ…」

「かしこまりました。沙都子様」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ