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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

チーズをテーブルにセットする背中を高宮は抱きしめた。

「一也…?どうした?」

「神山さん…俺、アンタのこと好きだよ」

「よせよ…」

笑いを含んだ声。

高宮は最近、少年の頃の夢を見る。

母親の男に組み敷かれたあの頃の夢を。

忌まわしいのだが不思議と怖くはなかった。

今の高宮には、沙都子も神山も居るからだろうか。

「アンタの兄さんより、アンタのこと、愛してるよ」

思わず口をついて出てしまった。

神山が振り返って高宮の腕を掴む。

「兄さんから、何か聞いたのか」

「いや…聞いてはいないけど…」

癒やしたい。

あの頃の高宮を抱きしめてくれたように。

神山のことを癒やしたい。

そう思ったら身体が勝手に動いていた。

そっと神山の唇にキスをして、抱きしめた。

「アンタのことも愛してる…」

「一也…」

意外なことに、神山はそのまま大人しく高宮の腕に抱かれていた。

暫く、部屋には沈黙が流れた。

「神山さん…」

「ん…ありがとうな…一也…」

身体を離すと、神山はワインを開けた。

「飲もう。折角持ってきてくれたのに」

「ああ…」

二人は血のような赤のワインを掲げて、グラスに唇をつけた。

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