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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

神山と高宮の距離が縮まったと沙都子は感じていた。

きっかけは何かわからないが、二人の間に流れる空気のようなものがいい方向に変質したと感じていた。

それを沙都子は面白いと思っていた。

今まで二人は沙都子を間に挟んで、お互いを愛撫してきた。

でも、この空気は…。

沙都子は一人でいたずらっぽく笑うと、窓辺に立った。

亘より言われたあの言葉が、沙都子を苦しめていた。

願いを無下にはできない。

普通の女性であったら叶えられるものを、自分はできないでいる。

神山と高宮という二人の男を愛してしまった。

そのことについては後悔はないし、これからも変えるつもりはない。

あの雷の夜。

沙都子の決意は、一生の物だった。

それほどの決意をもって、沙都子は禁断の愛に生きることを決めたのだ。

二人の男への愛に裂かれながら生きようと。

そのためならどんなこともするし、どんな嘘もつける。

この二人の赤心に、一生を持って応えたい。

親から教わった、これが沙都子の愛なのだった。


庭を渡り鳥の陰が過ぎていく。

見上げると、綺麗な隊列を組んで鳥が飛んで行くところだった。


亘は今の沙都子にとって唯一の肉親で、そして無条件に愛してくれる祖父である。

そんな祖父の願いを、沙都子はどうしても叶えたかった。

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