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お嬢様と二人の執事

第15章 夜明け前

「作家や芸術家の方はよくそうおっしゃいますね。自分の子供だと」

「はい。僕の場合は特に、ですかね」

「と、おっしゃると?」

「僕は子種がないんです」

「えっ!?」

「大学生の時、病気をして手術を受けたんですが…その際にいろいろありまして、僕は子供を持つことができないんです」

ごくりと高宮がつばを飲んだ。

「兄さん…俺、初めて聞いた…」

「ごめん。悟には言ってなかったな。うっかりしてた」

「うっかりが過ぎるだろ!」

「そんなに怒るなよ…。言いづらかったんだよ」

「あ…ごめん…」

「でも、現代の医療は進んでいますわ。治療はなんとかならないんですか?」

「ええ…もうどうにもならないということです」

先程からさらりと会話をしているが、とても重い内容の話だ。

だがそう感じさせないのは、智紀と沙都子の雰囲気のせいか。

「そうですか…では、智紀さんのお子さんを、大事にしますね」

「はい、是非。僕も精一杯、父親としての努めを果たしますので」

「頼もしいですわ」

高宮は不思議なものを見ている感覚に襲われた。

沙都子と智紀は、まるでこの世のものではないように見える。

この二人にとって常人の苦しみは、苦しみではないのだろうか。

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