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お嬢様と二人の執事

第15章 夜明け前

その後の時間は穏やかに、緩やかに流れた。

沙都子と智紀はリラックスして談笑している。

二人はよく笑って、よく食べた。

用意した菓子鉢は空になった。

「あら…食べ過ぎたかしら」

「太りますよ。沙都子さん」

「嫌だわ。これ以上太ったら、恋人に嫌われちゃう」

「意中の相手がいらっしゃるのですか?残念だなあ」

「あら。私と結婚してくださるの?」

「種なしで良ければ」

「ありがとう。嬉しいわ」

沙都子が手を差し出すと、智紀はなんの躊躇もなく取って手の甲に口吻した。

「に、兄さん!」

「え?」

「かまわないわ。神山」

沙都子はころころと笑って立ちあがった。

「では詳しい打ち合わせは、今度高宮に伺わせます。本日はありがとうございました」

沙都子は深々と頭を垂れた。

「そ、そんな。こちらこそ、ありがとうございました!」

智紀が立ちあがって礼を返した。

「兄さん、僕は沙都子様に付かなきゃならないから行くね?後は、高宮と…」

「ああ、ありがとう。わかったよ」

神山が軽く手を振ると、智紀も振り返した。

沙都子と神山の姿が見えなくなると、智紀はその場に崩れ落ちた。

「…今更緊張したの?」

「よくわかりますね…高宮さん…」

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