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お嬢様と二人の執事

第15章 夜明け前

深夜、再び神山の部屋に高宮が忍んできた。

今日は手ぶらだった。

「…来たか」

「お見通しですね」

「兄さんのことだろ」

「ええ…話が早い」

「これで来なかったら、お前の頭を叩いている所だ」

神山はそう言うと、壁に据え付けてある棚から酒瓶を取り出した。

芋焼酎だった。

「魔王ですか…。神山さん…焼酎も飲むのですか」

「物は試しで飲んでみたら、案外旨かった」

冷凍庫から氷を持ってくると、グラスに落として焼酎を注いだ。

「どうする?割るか?」

「じゃあそのまま」

二人でロックグラスを合わせた。

芋焼酎独特の香りと甘みが口の中に広がる。

「くるなあ…」

「無理するな。やっぱりちょっと割ろう」

高宮は実はそんなに酒が強い方ではない。

神山がザルなので、どこまで飲めるのか面白がって高宮は神山と酒を飲みたがるのだ。

ミネラルウォーターで割ったものを高宮の前に出してやると、神山は溜息をついた。

「まさか兄さんがあんなことになってたなんて…」

「神山さん、だがこれはチャンスだ」

「ああ…そうだな…」

しかし神山の表情は冴えない。

「俺のエゴのために、兄さんを利用していいんだろうか…」

ぽつり神山が呟くと、高宮は思い切り背中を叩いた。

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