お嬢様と二人の執事
第16章 ともにする人
「え?兄さん、それどういう意味?」
「神山さん、あんた、『完成した』って言ってなかった?」
高宮に責められるように言われたじろぐ神山。
「いや…だって…兄さん、電話で…」
徐々に小声になる神山を救うように沙都子が智紀の腕の中から智紀を見上げて聞く。
「智紀さん、あの…本当にどういう意味なのかしら?それ。」
完成品だとばかり思っていたので戸惑いを隠せない沙都子。
沙都子をゆっくりと離しながら智紀が口を開く。
「これね…出来れば触れられるぐらい近くで見てほしいなぁって思ってて。でもさすがに実物を触ってもらうわけにはいかないし…。
それでね、床に鏡かなんかを嵌めて絵をそのまま映し込んで…とか考えたけど、さすがに床に鏡は鏡はさすがにまずいでしょ?
その…ほら…女の人のスカート…とか?」
顔を赤くしながら言う智紀。
その表情を見ながら高宮はやはりこの人はどこか普通の人と感覚が違うと思った。
それは芸術家ゆえなのか?それとも智紀という人ゆえなのか、この時点ではまだ判断が出来ずにいた。
自分たちの計画のためにも…もっとこの人を知りたいと高宮は思っていた。
一方、沙都子は全く別のことを考えていた。
どうしたら智紀の望むように作品を展示することが出来るか…。
プロジェクトのトップとしてなんとしてもこの作品を美術館に飾りたいと思っている。
そのための最上の方法を考えるのにいっぱいだった。