お嬢様と二人の執事
第16章 ともにする人
ふと目をアトリエに向けると、智紀は新しいキャンバスに絵筆を置いていた。
「あの人…ネコみたいだ。捉えどころがないや」
高宮の口をそんな言葉がついた。
ケトルが笛を吹くころ、神山と沙都子がアトリエに戻ってきた。
「おかえりなさい、足、大丈夫?」
絵筆をもったまま智紀が沙都子に声をかける。
「はい…大丈夫です。お騒がせしてごめんなさい。お洋服までお借りして…。あの…これ…。」
智紀はキャンバスから沙都子に目を向けた。
「うん、よく似合ってるね?沙都子さんそういう格好も可愛いよ。」
沙都子は智紀の出したいわゆるボーイフレンドデニムを身につけてた。
上はもともと着てきていた白のブラウスに淡いブルーのざっくりとした綿ニットというシンプルなものだったからデニムにもよく合っている。
裾をロールアップして足首を出しているのでシルエットはマスキュリンなのになぜか色気があった。
「そうだ、沙都子さん、今度デートしませんか?」
「え?デート?」
突然の智紀の申し出に戸惑う沙都子。
「ちょっと、兄さん、何言ってるの?」
神山が大慌てで間に入る。
「なにってテートの誘いだよ?こんなに魅力的な人を前にデートに誘わないなんて男としてありえないだろ?」
そう神山に向かって言うと改めて沙都子を見る智紀。
「一緒に長野の美術館の予定地を見ることは出来ないかな?現地に行ったらいいアイディアが浮かぶかもよ?」
智紀はふわっとした笑みを浮かべてそう言った。