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お嬢様と二人の執事

第2章 執事と沙都子

「ごめんなさい…神山さん…」

「何を…謝ることがありますか…」

「だって、使用人の前では毅然とした態度を取らないといけないのでしょう…?」

そう言って、俺の顔を見上げた。

潤んだ瞳。上気した頬。

涙で光る頬に唇。

全て俺に委ねきって、俺に全幅の信頼を置いて…。

身体が震えてくる。

こみ上げる衝動に、負けそうになってくる。

その時、沙都子様の紅の唇が動いた。

「傍に…居て下さい…」



殴られたかのような衝撃で目の前が白くなる。

「はい…沙都子様…一生、お側に…」

そんなこと不可能だってわかってるけど、言わずには居られない。

「神山さん…」

弱々しく微笑んで、頬の涙を手で擦る。

「ごめんなさい…もう泣かないから…」

「いいえ…もっと…」

「え?」

「もっとお泣きなさい。それで気が晴れるのなら…」

そう言うと、静かに沙都子様を抱き上げた。

「神山さん…?」

寝室に運びこむと、天蓋付きのベッドに横たえた。

布団を被せて出ていこうとすると、沙都子様は後ろからスーツの裾を掴んだ。

「いかないでっ…神山さん…」

「沙都子様…」

泣きながら俺を見上げる瞳に、全て奪われた。

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