
お嬢様と二人の執事
第2章 執事と沙都子
「初めてではないんですね?」
神山さんが確認するように再度言った言葉にこくりと頷いた。
そう…初めてではない。
でも…初めてがあまりいい思い出でないから…その後は…。
「沙都子様…ではなぜ震えてらっしゃるんですか?」
再び抱きしめる腕に力が入る。
その腕が大丈夫だと言っているようで…少しずつ震えが治まっていく。
「その…すごく好きな人だったのに…乱暴にされて…痛かったのに…怖かったのに…やめてくれなくて…。
『感度がわるい』って…。」
あの時のことを思い出したら涙がどんどんこぼれ落ちる。
神山さんの胸に顔を埋めたまま止まらない涙が彼のシャツを濡らしていく。
「…それはとんでもない男に当たってしまいましたね。
馬鹿な男だ…。そんな奴のことは忘れてしまえばいい。
忘れられないなら…私が忘れさせて差し上げます、沙都子様。」
「神山さん…」
縋っていた逞しい胸から顔をあげて神山さんの顔を見る。
その瞳に宿る色に惹き付けられる。
「沙都子様…」
神山さんの肉厚な唇が私の唇を塞ぐ。
さっきまでよりもずっと深く官能的な口づけに流される。
ゆっくりと離れる唇。
銀色の糸が神山さんと私の唇を結ぶ。
「沙都子様…教えて差し上げます。貴女の魅力を…体を繋ぐことの気持ちよさを…。
罪悪感なんて感じなくていいですよ?これもお嬢様にとっては大事なことですから…」
そう言うと神山さんは来ていた衣服を自ら脱ぎ、ベッドの下に落とした。
