お嬢様と二人の執事
第1章 沙都子
葬儀や事故の後処理などをしていたら、いつの間にか一週間が経っていた。
弁護士事務所に電話をしたら、出向いて欲しいと言われた。
沙都子は葬儀から休む暇もなかったが、何かしていないと泣いてしまうので、常に身体を動かしている。
重い足を引きずるように、弁護士事務所を訪れた。
住所を頼りにたどり着くと、そこには大きなビルが建っている。
こんなところを借りて入っている弁護士事務所となると、かなり規模は大きいのだろうか、そう考えながら沙都子はビルに足を踏み入れる。
エレベーターに乗り込むと、少し髪を整えた。
扉が開くと、受付があった。
そこに座っている女性に用件を伝えると、すぐに笑顔になって立ちあがった。
「白濱様のお見えです」
そう奥に声を掛けると、一斉に人が飛び出してきた。
「えっ」
その人数に、沙都子は驚いた。
総勢20人近くがフロアに並んだのだ。
白髪を後ろに撫で付けた、スーツ姿の男性が進み出た。
「白濱様、お待ちしておりました。東堂会長もお待ちです」
「え…?」
「申し訳ございません。先方のご希望で…もしも会いたくなければ、そうお伝えします」
「え…そんなこと急に言われても…」
「そうですね…」
男性は顎を手に当て、沙都子を見た。
突然、口元が綻び懐かしそうな、嬉しそうな顔をした。
「まずは私からお話しましょう。その後どうするかはお任せします」
男性は、そう言うと名刺入れを懐から取り出した。
「私、この事務所の責任者で成瀬と申します」
「責任者…」