お嬢様と二人の執事
第3章 もう一人の執事
どれくらいの時をバスルームで過ごしたのか…。
泣きすぎてぼーっとした頭のまま、沙都子はバスルームから出てきた。
バスローブを身に纏い、広いリビングのソファーに座りこむ。
明日からどんな顔をして神山に会えばいいのか自問自答を続けるが答えは出ない…。
暖炉の火はとうに落ちている。
室内は暖炉の熱の余韻もなくなり、かわりに寒気が徐々にその場を支配しはじめていた。
バスローブ姿の沙都子がくしゅんと小さくくしゃみをした。
まるで、それを聞いていたかのタイミングでリビングの扉が開いた。
ビクッと身を震わす沙都子。
「沙都子様?まだ起きてらしたんですか?」
男性にしては少し高めの透きとおるような声。
そこにはこの館の執事である高宮が立っていた。
「そのようなお姿では風邪を召されますよ?
すぐに着替えをご用意したします。貴子か優子を呼びますので」
「あっあの、一人で着替えられますから。こんな時間に呼び出すなんてしないでください。」
懇願するような沙都子の様子に高宮はニヤリとひとつ笑うと恭しく頭を下げて言い放つ。
「かしこまりました。沙都子様は本当にお優しくていらっしゃる。しばしお待ちください。」
そう言って1度リビングを出た高宮はすぐに着替えを手に沙都子の前に現れた。
「どうぞ、沙都子様。」
にっこりと笑う高宮から着替えを受け取る沙都子。
後ろからくくくっと笑いを圧し殺すような声が聞こえたがそれを振りきるようにバスルームに飛び込んだ。