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お嬢様と二人の執事

第3章 もう一人の執事


「ところで、沙都子様。なぜこのような時間に起きてらっしゃったのですか?」

ハーブティーを口にする沙都子に高宮が問いかける。

「…その…眠れなくて…」

自分のなかに渦巻く様々な感情や今日の出来事を巧く消化出来なくて、もちろん説明も出来ない沙都子は短く答えた。


「悲しいことでも思い出されたのですか?」

一瞬の沈黙の後、高宮が呟くように言った。

「え?」

カップを見つめていた瞳が高宮を見つめる。

「目が…赤くなっておられますよ。」

高宮の一言に沙都子は目元に手を当てた。

誤魔化すように擦ろうとする手を高宮に止められる。

「沙都子様。そのようなことをなさると目が傷ついてしまいます。

後ほど濡れタオルをお持ちします。お休みになる前に冷やしてください。明日の朝、瞼が腫れていては亘様が心配されます。」

祖父の名を出されてしまい沙都子は高宮の申し出を断ることが出来なかった。

「で…どうして泣いておられたのですか?よろしければお話ぐらいはお聞き出来ますよ。」

高宮が綺麗な笑顔で沙都子を見る。

普通の人間ならその場で心のうちを話してしまうであろう笑み。

高宮が陰で『人たらしの高宮』と呼ばれる所以はそれだった。

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