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お嬢様と二人の執事

第4章 二人

沙都子の部屋のベランダにテーブルが用意された。

神山がその横で、サイドテーブルから紅茶を用意している。

「本当にこんなことでよろしいのですか?」

「ええ…」

沙都子の出した願いは、お茶をすることだった。

ヒーターをベランダに出し、ゆっくりと神山とお茶を飲むことを命じた。

沙都子の足元には小型のオイルヒーターがあった。

「寒くはございませんか?」

「大丈夫…」

ベランダから見える庭は広大なものだった。

いくつもの樹木が植わっていて、それを手入れする職人の姿が見える。

どこまでが本邸の庭で、どこまでがこの館の庭なのか、沙都子にはわからなかった。

「神山…ここは広いのね…」

「左様でございますね…侯爵時代からの土地でございますから」

こうやって東堂の敷地を見ていると、自分がちっぽけな存在に思える。

ここでは沙都子はお嬢様であると位置づけられているが、物のように扱われた夜を過ごし、沙都子の心には寒風が吹いているようだった。

沙都子の前に紅茶が置かれた。

「ウエッジウッドのウィリアムソンティーでございます」

「ありがとう」

神山は紅茶の入っていた缶を手にした。

「あ。可愛い…」

象の形をした缶だった。

沙都子はそれを手に取ると、神山にほほえみかけた。

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