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お嬢様と二人の執事

第4章 二人

しかし神山を前にして、この胸の高鳴りはなんだろう。

微かに漂ってくるシトラスの香り。

一昨日の情事が蘇ってくる。

昨日、別の男に抱かれたばかりなのに。

そんな自分に、沙都子は混乱していた。

神山の用意してくれた、チョコレートに手を伸ばす。

ヘーゼルナッツのチョコレートは、沙都子の心を幾分、解かせた。

「神山は…」

「はい」

「好きな女性はいるのですか?」

「えっ…」

突然の質問に、神山は答えに詰まる。

「私を抱いて、その方に申し訳ないとは思わないのですか…?」

「それは…」

「あくまで仕事で私を抱いたのですよね…?
だったら、あなたが好きだとおもう女性には、悪く思わないのですか…?」

「沙都子様…」

「高宮もそうです。恋人は居ないのですか?」

「さあ…それは存じませんが…」

噴き出てくる汗を、神山は押さえられない。

「それとも、男性とはそういういきものなのですか…?」

父と母を見てきた沙都子には、到底信じられなかった。

好きでもない女性を男は抱けるのだということを、沙都子は知らなかった。

知らなかっただけに、神山と高宮の行動が、理解できなかったのだ。

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