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お嬢様と二人の執事

第4章 二人

「私にレクチャーしていることは、相手の女性はご存知なの?」

「…沙都子様…」

「答えて」

沙都子はムキになっていた。

神山なら、答えを出してくれると無意識に思っていた。

一番最初に差し伸べられた手…。

沙都子はまだ縋っていた。

あんなことがあっても、神山はずっと傍にいてくれるような気がしたから。

「私が好きな女性は…」

神山が口を開いた。

沙都子が息を呑む。

「私の手の届かない方です」

そう言って、まっすぐに沙都子を見た。

「私はその方の幸せのみ、願っております」






夜になり、沙都子はシルクのパジャマに腕を通した。

鏡台の鏡に自分の姿を写すと、髪を整えた。

自分でも可笑しいほどそわそわしている。

部屋をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

高鳴る胸をどうすることもできなかった。

感じてはいけない。

そうは思っても、神山に触れられると思うことが、沙都子を高ぶらせた。

「失礼致します」

入ってきたのは、高宮だった。

「高宮…」

「沙都子様、本日は申し訳ございませんでした」

高宮は優雅に一礼した。

「もう風邪もすっかり良くなったので、ご挨拶に」

「そう…」

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