恋空予報
第19章 君に精一杯の愛を
一瞬、思考が停止した。
「和、おかえりって
言われたら何て返すの?」
…いや、もうただいまって
言ったんだけど…。
…じゃなくて!
「なんで母さんがいるんだよ…」
「相葉さんに、あ、
もうあなたも相葉さんなの?
一緒に住んでるから。」
「なんでそうなるんだよ…。」
確かに結婚はしたつもりだけど、
バレるのが嫌だから名字は
そのままだった。
「相葉さんに見つかっちゃったのよ。」
「…雅紀は?」
「さあ?お風呂場かしら?」
「………。」
母さんに会ったのは
何年振りだろう。
あの頃と全然変わらない。
「和、手を洗ってきなさい。」
「……。」
「返事は?」
「はい……。」
よくわからない。
なんで母さんがいるんだ?
雅紀はいないし。
見つかったって…。
やっぱり、あのときの
コンビニ店員さんは
母さんだった…?
「……和、母さん
謝らないといけないことがあるの。」
「…。」
「ごめんね。置いて出ていって。
自分勝手なのはわかってる。」
「……どこ行ってたんだよ。
どーせ、変な男のとこだろ。」
「ううん。違うの。」
…じゃあ、どこだよ。
「母さんね、ハローワークで
仕事を探していたの。
このままじゃだめだなって。
あのままじゃ……
だめになるってわかってたの。」
「……馬鹿。」
「ふふ、和も声変わりしたのね。」
にこにこと笑い、
俺の頭を撫でた。
その手が優しくて、
ぽろっと熱いものが流れた。
「男の子なんだから
泣くもんじゃありませんよ。」
「泣いてない……。」
出たものを手で拭い、
母さんに向かって笑顔を作った。
「もう…。」
母さんも泣いていた。