イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「この家で君は遠慮するな。」
「っ…」
ハルの指先が意図せずテリザの首筋をかすめ、彼女は思わずびくっと身を引いた。
(怖いっ…)
「…?テリザ?」
ハルは少し手を引いてテリザの顔を見た。
「っ…すみません、何でもないです。」
テリザは早口で誤魔化した。
「それじゃあ、失礼しました。」
彼の反応を見るより前に廊下に出て、テリザは真っ先に後悔した。
(ごめんなさい、ごめんなさい…。)
男性の硬い指先に、あれだけで、全身に震えが走った。
(ハルさんとラッド様の優しさに―――答えられない。)
気持ちに全然、答えられていない。
額に片手を当て、よろりと廊下の壁に寄りかかった。
「…テリザ様?」
女性の柔らかい声に、テリザは顔を上げた。