イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
今より20年以上も前に、無邪気な少年のラッドがページに落書きしているところを想像してみた。
(きっとすごく可愛かったんだろうな。)
今の逞しい彼を見上げ、テリザは本を閉じた。
「ありがとうございます。これ、すごく読んでみたいです。」
「それは良かった。」
くしゃくしゃと頭をなでられた。
(また…)
「あの、ラッド様…」
「んー?」
なでられながら、テリザはずっと気になっていたことを口にしてみた。
「私のこと、子供だと思ってますか?」
するとラッドは驚いたように手を離し、テリザを見つめた。
「―――いや。」
彼の瞳がふいに真剣味を帯びた。
「そんなこと、思ってない。」
「っ……。」
テリザは耐えきれなくなり、合わせていた視線をそらした。
「あ、りがとう、ございます…。」
(―――どうして私はこんなことを聞いてるの。)
とてつもなく胸が痛くなり、目の奥がツンと沁みて、テリザはそれを隠すために下を向いた。
「…体調は、大丈夫なのか?」
突然彼の体温が離れていくと同時に、全く考えていなかったことを質問されて混乱したが、ハルに発作のことを教えられたのだろうと気付き、テリザは慌てて答えた。
「あ…はい、もう大丈夫です。」