イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
(……。)
彼の脳裏には、テリザとデートした日、彼女をブルーベルに送っていった時にアレクと交わした会話が蘇っていた。
『…あいつ、お前には変な態度じゃねーのか?』
『…?何がだ?』
ラッドが聞き返すと、アレクは少し迷ったのち、口を開いた。
『全然他人に歩み寄ろうとしてねーっていうか、拒絶してないか?』
ふっと、仕事に戻った彼女に目をやると、親し気に彼女に話しかけるノエルと笑顔で喋っているようだが、文字通り一歩引いているように見える。
話を切り上げると、初めて会った他人に対するようにお辞儀をしてノエルから離れていく。
苦笑いをするノエルに振り返ることはなかった。
『それよりもっと…あいつは、自分のことに全然関心がねー。』
アレクの言葉に、ラッドは振り返って彼を見据えた。
アレクの目で、彼が冗談を言っているのではないとわかる。
『自分を大事にするっていう発想すらないように見える….から、』
アレクはラッドを睨み、手の甲で彼の胸をドンと叩いた。
『あんまり無茶なことに巻き込むなよ。』
『……ああ。』
自分がどんな表情をしていたかはわからないが、アレクは確かに真剣だった。