イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
一つの裏路地の横でラッドは車を止めた。
戸惑いながら車から出たテリザは、ハルに習った礼儀に従ってラッドの腕に手を添えた。
彼女の困惑を察知したのか、ラッドは説明した。
「裏のカジノだからなー、目立たないようにしてるんだ。意外だったか?」
「はい……。」
テリザは小さく頷いた。
ハルはそっとテリザの肩に手を置いた。
「心配するな。俺達がついている。人目のあるホールから離れなければ、なんの危険もないだろう。」
テリザは頷いた。
「…とはいえ、不安なら今からでも戻っ…」
「いいえ。」
ハルの言葉に、テリザははっきりと言った。
「お役に立てるのでしたら、参ります。」
そう言うと、ハルは手を離し、ポンとテリザの背中を叩いた。
「…それなら、行こう。」
テリザは微笑した。
「はい。」
緊張を隠して二人とともに入口に歩いていくと、警備員にコインの提示を求められる。
ラッドがそれを見せると、警備員はじろじろと訝しげに三人を見た。
「…見慣れない顔ですね。」
彼が切り出すと、テリザは僅かにぴくりと肩を震わせた。
「まぁそう言うな。この通り、通行証はあるだろ?」
ラッドはそう言ったが、警備員はまだ疑っているようだ。