イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
「見かけないご令嬢ですが、お兄様は、どちらの方で…?」
「リック様とも遠縁の親戚にあたりますわ。…あまりこちらには顔を出さないので、ご存じないとは思いますが。」
「そうですか…。こんなに美しいレディを今まで知らなかったことが、不覚ですよ。」
「えっ…」
きざな口説き文句に何と言えばいいのかわからず、テリザは困って視線を泳がせた。
およそ令嬢らしからぬ態度をとってしまったにもかかわらず、リックはふふっと笑った。
「可愛らしい方ですね。」
すっと手を絡めとられ、指先にキスを落とされる。
「っ、恐れ入ります…。」
一つの部屋の前でリックは足を止めた。
「ゆっくりしましょうか。飲み物でも持ってきますから、どうぞ座っていてください。」
「はい…。」
驚くほどあっさり言われ、リックが離れていったが、テリザはその場に留まった。
もしこれが罠で、自分が人質にとられたりしたら、ラッドとハルに確実に迷惑がかかる。
リックは悪い人には見えないが、ラッドが目を付けたのにも理由があるに違いない。
入るか迷っていると、いきなり後ろから強く突き飛ばされた。
(?!?)