イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
「テリザ」
テリザは身支度を整えて店へ出ると、アレクに声をかけられた。
「はい、なんでしょう。」
「俺は買い出し行って来るから、適当にやっとけ」
「えっ!?」
(適当に、って言われても......どうしよう!?)
アレクが出て行き、焦って店内を見回すが、ハルの姿も見当たらない。
探す暇もなくドアベルが鳴って、さっそくお客様がやって来た。
「い、いらっしゃいませ!」
テリザが振り返ると、ハットをかぶった男性が目を瞬かせていた。
「あれ...君、昨日まではいなかったよね?」
「はい、今日から働くことになりました、テリザです」
「テリザちゃん...か。俺はノエル。よろしくね」
彼はにこにこと笑った。
(この方は、お店の常連さんなのかな...優しそうな人)
「にしても、君...この店で働こうなんて、変わってるねー」
「変わってる?」
テリザはきょとんとしてノエルの顔を見上げた。
「あれ...テリザちゃんは、 『ブルーベル』 の秘密、知らないんだ?」
(この店の、秘密......?)
「テリザちゃんが知りたいなら、教えてあげてもいいけど」
急にノエルは距離を縮めて、テリザの耳元に唇を寄せて声をひそめる。
「ただ...ここじゃなくて、誰にも聞かれない場所で」