イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
一人になったテリザは、ベッドにうずくまった。
一刻も早く起き上がりたい。
身体に触れるもの全てに汚染されている気がするのに、身体がいう事を聞かない。
(苦、しい…。)
ガタガタと身体が震えた。
―――汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い、汚い―――
掌に爪が食い込むほど強く握るが、痛みさえ感じない。
怖い。
テリザはぎゅっと目をつぶり、ベッドの中で小さく丸まった。
カチャリと静かにドアが開く音がして、テリザはびくっと震えた。
「―――テリザ様。」
優しい声に、テリザは視線だけを向けた。
「ルナさん…。」
半身を起こそうと身じろぎするが、ルナはそっとテリザの肩を押した。
「枕に寄りかかっていてくださいね。今は休むことが大事ですよ。」
「……。」
テリザはマットレスに身を沈めると、ルナはマグに入れた、湯気の立つ液体を差し出した。
「ハルさんから、お薬です。気持ちが落ち着きますよ。」
そっと口をつけて喉を鳴らすと、じわりと温かみが広がり、甘味が舌の上でとろけた。
心なしか、少し胸のざわめきが落ち着いた気がする。
ちびちびと甘い薬を飲み下している間、ルナはずっとそばに控えていた。
「―――ありがとう。」
飲み終えてマグをコトンとサイドテーブルに置くと、テリザは淡く微笑んだ。
「……いえ。」
ルナは、ふっと顔を上げた。
「あの、何か欲しいものはありますでしょうか…?できることなら、しますよ。」
気遣うような眼差し。彼女は何が起きたのか知っているのだろうか?
「―――お風呂に入っても、いいですか?」
考えるより先に答えていた。
早く、身体を洗いたかった。