イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「――テリザ様」
「ルナさん、ごめんなさい、今日はもう寝ますね。おやすみなさい。」
微笑んではいるがきっぱりと言ったテリザに気おされ、ルナは下がった。
「はい……ではまた明日の朝に。」
「ありがとう。」
半ば強引にルナを送り出してしまった。
バタンとドアを閉めて背中を預けると、テリザはうなだれて、ずるずると床に崩れ落ちた。
―――なんで。
なんで、なんで、なんで。
ダメなのに。そばにはいられないのに。壊してはいけないのに。
壊れる前に、手放せたら...何も失わない。
大事だと思ってしまったから。だからこそ、消えないといけないのに。
誰よりも好きだったあの人の、つらそうな顔が蘇る。
―――ああ、ごめんなさい……。
激しい感情の波に覆われ、テリザは微かに背中を震わせた。
―――ごめんなさい、ごめんなさい……幸せは、もう求めません―――
喉の奥が詰まったみたいに苦しかった。
彼もまた、失うことを、知っていたのだ。
だからこそ、彼に同じ思いはさせられない。自分は、いつまで留まっていられるかすらわからないのに。
ただただ、胸が痛かった。