イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
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カタン、とトレーをカウンターに置く音がブルーベルに響く。
アレクは落ち着かない様子でカウンターの上を指でリズムを叩いた。
今日、テリザがまた出勤してくるとハルから聞いていた。
ラッドとはあまり顔を合わせていない。彼は仕事であまり家にいないし、もともと言葉を交わすのも必要最低限だったが、正直見ていられなかった。
彼の煮え切らない態度には、際限なく苛々させられる。彼には事情があるのも、知っている。だけど、今はそれがテリザを巻き込んでいっている。
彼女のことは―――気になる。
同僚としてか。あるいは、目を離せば泡沫のように消えてしまいそうだからか。
それとも、もっと…。
アレクは溜息を吐いた。
どちらにしても…彼女が心配だった。それは、否定できない。