イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「…ノエルさんはどうしていつもそうチャラチャラしてるんですか。」
テリザがトレーからカップを置くのと同時に、リュカは不機嫌そうにぼそっと言った。
「常に女の子をはべらせてる男には言われたくないことだね、リュカくん。」
「はべらせてなんかいません。人聞きの悪いことを言わないでください。」
(え…えええ???)
誰とも仲良く接するリュカの突然の低い声に、テリザは戸惑って瞬きした。
「あの、ケンカは…」
控えめに口を出しかけたところ、ノエルがそっとテリザの手をとった。
「んー、素敵なレディを困らせるのは本意じゃないけど、テリザちゃんは譲れないなー。リュカくんには特に…ね。」
指先に柔らかくキスを落とされ、テリザはぴくりと身体を震わせた。
「ノエルさん、いい加減にしてください。本人は嫌がってますから。」
固まってしまったテリザの代わりにノエルの手を振り払い、リュカはテリザの頬に手を触れた。
「顔色悪いけど、本当に大丈夫なの?」
「う、うん…。」
「ちょっとリュカくん、邪魔しないでよ。」
また手に触れられそうになり、テリザは反射的に身を引いた。
「あの、仕事中なので…失礼します。」
彼らにまた何か言われる前にくるりと背を向けて歩いていってしまった。