イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
彼らの視界から離れたことを確認すると、テリザはふるりと体を震わせ、首を振った。
寒気がする。あの二人がいい人だとわかっていても、怖い。
男性の手の感触が、消えない。
「ぅ……」
額に手を当てて、息をついた。
―――会いたい。
あの人に?
…いや、そうじゃない。それ以上に…ラッドに触れたかった。温かくて力強い腕に、抱きしめて欲しかった。
そんなことが思い浮かび、テリザは内心で自嘲気味に笑った。
絶対に触れてはいけなかった感情なのに。わかってるのに。
気持ちを振り切るように顔を上げると、また入口が開いたところだった。が、今度入って来たのは客ではなく、郵便を配達しに来た人らしい。彼はカウンターの近くに歩み寄ると、一枚の封筒を、制服姿のテリザの前にポンと置いた。
「ありがとうございます…。」
どうも、とぺこりと頭を下げて、彼は出ていく。
(私宛て…?)
表側には、自分の名前が書いてある。テリザは何気なく封筒を裏返し、そして息を飲んだ。